「ミラ、だいじょうぶか?」
おじいさんが へやに 入ってきました。
ミラはまどのそばで うずくまっていました。
「ミラ、なにがあったんじゃ?」
「チッチが……チッチが…なにか黒いものに……。」
ミラはうまく はなせませんでした。
おじいさんはミラを だきしめました。
ミラは小さくふるえています。
「そうか、お前はダンダを見たのか。」
おじいさんはミラのあたまを なでながら やさしい声でいいました。
「ミラ、いのちあるもの いつかは なくなるときが やってくる。チッチにとってそれが 今日だったんじゃ。」
「死はけして わるいものではないんじゃよ。」
ミラは 顔をあげました。
「チッチと、ついてきなさい。」
おじいさんとミラは森をしばらく歩きました。どの道をどう歩いたのかミラがわからなくなったころ、目の前にいずみが広がっていました。
いずみの真ん中には とても大きな木が立っています。
その葉は赤く、美しい白い花が咲いていました。
四方に広がる枝や根は、まるで脈をうっているようにみえます。
ミラは息を飲みました。
「この木はな、星のいのちの木なんじゃ。この木はこの星そのもので、全ての生き物とつながっているんじゃよ。」
「さあ、チッチをここへ。」
おじいさんは いずみのほとりを指さしました。
「うん。」
ミラはだき抱えていたチッチをやさしく寝かせました。横にはねんねまくらと 赤い木の実を置いてやりました。
ミラはまた涙が出ました。
「チッチ、ありがとう。」
ミラがそう言い終わると、いずみの中から数本の木の根がにゅるにゅると出てきて、チッチの体にはりつきました。
「わっ!」
ミラはお驚きました。
木の根は ズルズルとチッチを吸い取っていきます。
ミラはなんだかおそろしくなって顔をそらしました。
「よく見ておきなさい。チッチのいのちは、星のいのちの一部となって また生きていくんじゃ。それはお前の一部でもあるんじゃよ。
お前の父親も、母親もそうやってお前と共に今も生きておる。チッチだってそうなんじゃ。それは悲しいことなんかじゃないんだよ。新しいいのちになっていつもお前と一緒におる。わしもまたそうじゃ。」
おじいさんはほほえみました。
チッチは小さな骨になり、そしてその小さな骨もやがて根に吸いこまれていきました。そして根はまたいずみの中へ戻っていきました。
ミラは、しばらくチッチがいたところを見つめていましたが、
「そうなんだね。チッチとぼくとこの星と、全てはこの場所にあったんだね。」
ミラは 涙を拭いました。
木は美く、もえるように 確かにそこに立っていました。
ミラと星のいのち〜おわり〜
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