ゴトはまよなかに、まっすぐにのびた道を はしっていました。
ゴトは はしることがとくいでした。
だれよりもはやく、風をまっぷたつに きりさいてゆくことが、ゴトにとっての 全てでした。
だれよりもはやいことが、ゴトにとっての ほこりでした。
ともだちはみんな、ゴトがはしると すごいね、とほめてくれます。
この星で、ゴトよりはやく はしることができる人は 1人もおりません。
とにかく、はやく、きのうよりすこしでもはやく、はしりたいのです。
そんなゴトにとって真夜中は、はしることだけを 考えることができました。
なぜなら みんなねしずまって、道にはだれひとりいません。
なにもゴトがはしるのを じゃまするものはいないのです。
「きもちのいい夜だなぁ。」
ゴトはそんな しずかな夜が なにりよりもすきでした。
ゴトがはしると かれのめのまえにある くうきはさけ、そのくうきとくうきのあいだに ゴトはすばやく すべりこんでいきます。
そのかんかくがなんとも ここちよくて
風が みみもとをヒュンと とおりすぎる音が たまらなくすきなのでした。
ゴトのからだは、かれが スピードを求めれば求めるほど、早く、まるでひとすじの光のようです。
「おれは、まだまだ早く走れるぞ」
そう考えると ゴトの血はゾクゾクと 湧き上がり、もっともっと走りたくなるのです。
「今夜も走るぞ!」
からだのちょうしもいいようです。今夜は どこまでも走り抜けられそうな気がしました。
(おお、今夜は特に ちょうしがいいぞ!)
そう思った時でした。
続きます
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