ゆうちゃん、おぼえてるかな?君が僕を初めてかけたとき、周りをみわたして、喜んでいた君のキラキラした目が僕は大好きだった。
黒板がはっきり見えるって勉強も一生けん命にやるようになったっけ。
人の顔もはっきりみえるから、友達と遊ぶのもますます楽しくなっていったよね。
寝るときと朝起きたときは必ず僕のレンズをきれいに磨いてくれて、毎日ピカピカにしてくれていたね。
運動だって、大好きなテニスの球がよく見えるから試合にも勝てて僕も本当にうれしかったよ。
受験勉強も一緒に頑張ったよね!
でも・・・
「おかあさん、高校生になったからコンタクトレンズにしてもいい?」
「そうねぇ。ゆうちゃんも大きくなったものね。おしゃれしなくちゃね♪」
「やったー!ダサいメガネともお別れだ!」
え!ぼくってダサい!?
ゆうちゃんそんなふうにお思ってたの!?
それに、コンタクトレンズってなんだろう…。
その日からぼくはメガネケースにいれられて、ゆうちゃんはぼくをかけてくれなくなった。
ある日ぼくはメガネケースのすきまからこっそりゆうちゃんをのぞいてみた。
ゆうちゃんは指先にのせた小さなレンズを目の中にいれていた。
ゆうちゃん!そんなことして大丈夫なの!?
目がいたくならないの!?
またぼくをかけてよ!昔みたいに一緒に色んなものをみようよ!
ぼくはゆうちゃんに叫んだ。
でもゆうちゃんにはきこえなかったみたい。
さっと家を出ていってしまった。
きっと学校にいったんだろう。
ぼくの知らない世界に。
その日、ゆうちゃんの夢を見た。
ゆうちゃんはまだ小さなこどもで、ぼくをかけてキラキラ輝く目をしてる。
ぼくはゆうちゃんに色んなものを見せてあげていた。
お父さんお母さんやお友達、先生の顔。
ゆうちゃんが大好きなテニスの試合、そして、美しい景色……。
それからどれくらい時間がたったのだろう。
久しぶりにゆうちゃんの声をきいた。
「あった!!私のめがねこんなところにあったんだ!」
ゆうちゃんはそっとぼくを手に取り、昔のようにかけてくれた。
「めがねやっぱいいなぁ。コンタクトだけだとなんか目がつかれるし、ドライアイになっちゃうんだよね!」
ゆうちゃんがぼくをかけながら見た先には男の人の顔があった。
「そうなんだ。ゆうこのめがね姿はじめてみた。」
「メガネかけてるところ、恥ずかしくて見せたくなかったんだ。」
「・・・かわいいよ。」
男の人は顔を赤らめながらそういった。
「ありがと。メガネだとリラックスできるから、これからは家に帰ってきたときはかけるね。」
小さな声でそう答えたゆうちゃんの顔もほんのり赤かった。
ゆうちゃんと男の人は恥ずかしそうに見つめあった。
ぼくはなんだかそれが嬉しかった。
コメント