春になりました。
森はさわがしくなり、さわやかにそよぐ風からは、どこかでさいている 花のいいかおりが まざっています。
あたたかくなって おじいさんは、少し歩けるくらいになりました。
「おはよう。チッチ。ぼくはおじいさんと すこしばかし おさんぽに行ってくるよ。」
ミラは小鳥にチッチという名前をつけたようです。
「チーチーッ」
チッチは、バサバサと羽をうごかしました。
もう少しで また飛べるようになりそうです。
「フフ……。わかってるよ、チッチ。お前の朝ごはんにも ついでに取ってきてやるから 待っているんだよ。」
ミラは、おじいさんの 肩にかけてあげる うすてのもうふを手に取り、木の実を 入れるために よういした 小さなきんちゃくを こしに ぶらさげました。
「きょうは とてもさわやかな 朝だよ。おまえも はやく外に出たいだろう。春のかおりを 少しでも味わうといいよ。」
ミラは チッチのめに、まどを 少しあけてあげました。
「なに、すぐに帰ってくるよ。いってきます。」
そういって あしばやに 出かけました。
ミラとおじいさんは、森の小道を 歩いていきました。冬の森とはちがい、小鳥たちや、木の葉がさわさわと歌う声が きこえます。
ミラは、みどりのコケがびっしりついた石のあいだから、わき出ている 水をみつました。
水はさらさら と流れおち、小さなくぼみに たまっています。
ミラは、ながれ出る 水を 手ですくって ひとくち飲みました。
つめたい水は あたたかくなって 少し汗ばむ ミラのからだのねつを いくらか下げました。
ミラはおじいさんにも 水を飲ませてあげました。
「おいしいね、おじいさん。チッチにも この水を飲ませてあげたいな。」
「ミラは、チッチが たいせつなんじゃな。」
おじいさんはききました。
「うん。チッチは ぼくが取ってきた木の実を いつもおいしそうに 食べてくれるんだ。そのおれいに 歌をうたってくれるんだよ。」
ミラはうれしそうにこたえました。
「そうか。しかし、ケガがなおったら、チッチは森に帰らねばならん。それは分かっているね。」
「ぼく……あんまり、かんがえないようにしていてんだ……チッチとお別れしたくないよ……。」
ミラははなのおくがあつくなって、涙が出そうになるのを グッとこらえました。
「でも、ぼくは、それがチッチにとって いちばんしあわせなら がまんするよ。」
「チッチにもかえるべき場所がある。父おやに似て、やさしいこじゃな。お前は。」
おじいさんはほほえみました。
ミラもにっこりわらいました。目には涙がいっぱいたまっていました。
続きはこちら→『ミラと星のいのち5』
コメント