ミラと星のいのち6

ミラと星のいのち

「ミラ、だいじょうぶか?」

おじいさんが へやに 入ってきました。

ミラはまどのそばで うずくまっていました。

「ミラ、なにがあったんじゃ?」

「チッチが……チッチが…なにか黒いものに……。」

ミラはうまく はなせませんでした。

おじいさんはミラを だきしめました。

ミラは小さくふるえています。

「そうか、お前はダンダを見たのか。」

おじいさんはミラのあたまを なでながら やさしい声でいいました。

「ミラ、いのちあるもの いつかは なくなるときが やってくる。チッチにとってそれが 今日だったんじゃ。」

「死はけして わるいものではないんじゃよ。」

ミラは 顔をあげました。

「チッチと、ついてきなさい。」

おじいさんとミラは森をしばらく歩きました。どの道をどう歩いたのかミラがわからなくなったころ、目の前にいずみが広がっていました。

いずみの真ん中には とても大きな木が立っています。

その葉は赤く、美しい白い花が咲いていました。

四方に広がる枝や根は、まるで脈をうっているようにみえます。

ミラは息を飲みました。

「この木はな、星のいのちの木なんじゃ。この木はこの星そのもので、全ての生き物とつながっているんじゃよ。」

「さあ、チッチをここへ。」

おじいさんは いずみのほとりを指さしました。

「うん。」

ミラはだき抱えていたチッチをやさしく寝かせました。横にはねんねまくらと 赤い木の実を置いてやりました。

ミラはまた涙が出ました。

「チッチ、ありがとう。」

ミラがそう言い終わると、いずみの中から数本の木の根がにゅるにゅると出てきて、チッチの体にはりつきました。

「わっ!」

ミラはお驚きました。

木の根は ズルズルとチッチを吸い取っていきます。

ミラはなんだかおそろしくなって顔をそらしました。

「よく見ておきなさい。チッチのいのちは、星のいのちの一部となって また生きていくんじゃ。それはお前の一部でもあるんじゃよ。

お前の父親も、母親もそうやってお前と共に今も生きておる。チッチだってそうなんじゃ。それは悲しいことなんかじゃないんだよ。新しいいのちになっていつもお前と一緒におる。わしもまたそうじゃ。」

おじいさんはほほえみました。

 チッチは小さな骨になり、そしてその小さな骨もやがて根に吸いこまれていきました。そして根はまたいずみの中へ戻っていきました。

ミラは、しばらくチッチがいたところを見つめていましたが、

「そうなんだね。チッチとぼくとこの星と、全てはこの場所にあったんだね。」

ミラは 涙を拭いました。

木は美く、もえるように 確かにそこに立っていました。


ミラと星のいのち〜おわり〜

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